◆議員の心構え(040530)

 行政の執行機関の長である市長と、議会を構成する議員とは、どのような関係にあるのでしょう。
 東愛知新聞(050429)によれば、蒲郡新政クラブを結成した波多野会長は、
「市制50周年の大きな節目に新会派を結成した。誠実・行動・責任をモットーに、提言のできる会派として推進していく。今後も自民党員として金原久雄蒲郡市長を支えていく」と意欲を語った。
 とあります。

 市会議員は、市長を支えるものなのでしょうか。


  「議員必携」(全国町村議会議長会編 学陽書房)によれば、
 現行地方自治制度においては、議会は意志決定機関として、長は執行機関としてそれぞれ権限と責任を分担し、住民に対して直接責任を負う二元的代表民主制がとられており、両者は対等の関係にある。
 とあります。

 つまり、市長とは、是々非々にて対応しなければならないはずです。

 しかし、実際は、互いに議会をスムーズに運営できるように、言い換えれば、互いに楽をするために、事前に取引(過度な情報交換)されています。特に、現在の最大会派である市政クラブとは、密接な関係ができています。市長は、たとえ議員削減すべきだと思っていたとしても、議員の反発を恐れてしません。一方、議員も、市長が改革に積極的な対応をしなくても、自身の権力に影響を及ぼさない程度の改革を少しずつされていれば良しとしています。これでは本当にしなければならない改革が何時までたってもできそうにありません。市民のために、もっと緊張感を持った関係であるべきです。

 少なくとも、議員が「市長を支える」なんてことを平気で言わないようにしていただきたいと思います。

 

                     

「議員必携」 全国町村議会議長会編 学陽書房

結び 地方議会当面の課題と議員の心構え

一高まる地方議会・議員の役割 (中略)
二地方分権の推進と議会の対応 (中略)
三地方議会の活性化 (中略)


四 議員の心構え

 次に、このような課題をかかえて、対応を迫られている地方議会の構成員として、議会を運営し支える立場の議員の心構えである。
 いかに制度や組織が整備されても、それを運用する者の心構えがなければ、制度は生かされない。
 町村の議事機関として、重要な政策の決定と行財政運営の批判と監視の二つの重大な役割を果たすべき町村議委員の構成員としての議員の心構えは、いかにあるべきであろうか。 基本的心構えを、次に掲げることにする。

住民全体の代表者である。
 「すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」。憲法第15条のこの規定は、議員という公職に身をおく者の心構えの基本をうたったもので厳粛に受けとめるべきである。
 議員は、住民全体の利益のため、法令に基づいて公平にその権限を行使すべき厳しい立場にあるということである。その職務の遂行に当たっては、住民や行政機関あるいは同僚議員との関係でいろいろな問題に当面することがあろうが、そうしたときに想定して判断の基準にすべきものが、「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」というこの規定である。(中略)

執行機関と一歩離れ、二歩離れるな
 大統領制の組織原理が、議会と執行機関が権限を明確に分かち合って相互に牽制し合う「対立の原理」を基本とする以上、議員は、常に執行機関とは一歩離れていなければならない。
 それが離れずに密着するのなら、議会・執行機関の二次元的な仕組みは無用であり、有害である。執行機関を公正に眺め、厳正に批判し、行財政執行上の重要事項について適正で公平妥当な結論を見出してこれを決定するのが議事機関である。
 執行機関に近づき過ぎて一つになってしまっては、批判も監視も適正な政策判断もできないのは当然で、議会の存在理由はなくなってしまう。
 また、逆に、議員が執行機関より離れすぎてもその役割が果たされない。町村行政は、議会と執行機関の両者の共同で進められるものであって、議決は、執行のための手続きや過程である。離れすぎては、適切な行政執行の正しい検証はできないし、また、非難や批評はできても、議会の使命である正しい批判と監視はできない。
 この原則が守られなければ行政は乱れ、ゆがめられ、民主的で公平な運営が損なわれる。議会の構成員である議員は、常に執行機関とは一歩離れ、二歩離れない姿勢が大事である。

批判するには、代案をもってせよ
 議会は、住民を代表して重要な事件を審議し、決定し、行政を批判、監視する機関である。したがって、理由があれば批判、攻撃も、また、問題についての追及もいかに鋭くてもよい。
 しかし、批判、攻撃そのものが目的ではなく、あくまでも行政を合理的、効率的に行わせることが目的である。議員が指摘した事項がその方向で改善され、実行されなければ何にもならない。ただ批判のみに終わる一人芝居では能がない。議員多数に指示され、執行部に共鳴させ実行させなければ、その価値がない。
 したがって、批判や攻撃は、必ずこれに変わるべき代案をもっていなければならない。執行機関の案が悪いのであれば、それに対する実現性のある具体案を持たなければならない。悪や不正を追及するためには、何が善であり、何が正しいかを明確に示すとともに、自らも他人の厳しい批判に耐えうる覚悟をもたなければならない。要は、厳しさの中に温かみのある言葉で批判し、説得力のある実現可能な具体的代案をもって臨む心構えが必要である。

実質的な審議が大切
 議会は、議事機関であって、十分に審議を尽くすのがその職責である。審議の適否は、ただ単に会期日数や審議日数の長短だけでは論じられない。会期の日数等は、その時点における議会の構成によって、また、事件がかかえる問題点の多寡やその内容によって左右される。議会の審議に対する評価は、どのような高度な質疑や討論が濃密に行われたかによってなされるものである。
 重大な指摘事項があるはずなのに、「異議なし、異議なし」ですませたり、逆に、住民の福祉とは直接関連のない議会の内部運営の問題や人事案件で紛糾して日数を費やすようなことでは、住民の信頼は得られない。
 住民の立場に立って実質的な審議を尽くすことが、議会の使命であることを忘れてはならない。

住民の声や心を代表する
 議員は、住民の代表者である。それは、住民が考えていること、思い願っていることのすべてを代表すると言うことである。
 大きく叫び、強く訴える組織やバックを持った住民の声は容易に把握できるが、地域社会の片隅にいる弱者の声、組織を持たない住民の小さい声、特に声なき声やため息は聞き取りにくい。住民と行政との橋渡しをすべき議員は、そうした大きな声、小さな声、声なき声、ため息すべての声を把握してこれを代表し、住民の心情をつかんでその心で物事を考えることが大事である。(中略)

勇気と奮起が政治家の要素
 町村議会の議員は、町村政治における政治家である。政治家とは、常に地域の現状と問題点を考え、将来のあり方をふまえて住民を指導すべき立場にある。指導するためには、それなりの識見と信念を持つことが要求され、これを行政に、また、住民に訴えて説得しなければならないのである。
 そのために、政治家に強く要求されるのが、「勇気」と「奮起」である。
 かつて、ある有名な外交官がアメリカの故ケネディ大統領に、直接会って「政治家として一番大事なことは何か」と質問したところ、即座に「それは、勇気である」と答えたという。勇気なくしては、思い切って発言し、行政や住民に訴えて説得し指導することはできないというのである。
 また、その外交官がイギリスの故チャーチル首相に同じ質問をしたところ、「それは、奮起である」と答えたという。議員自らが奮起して発言し、行政当局と住民に訴えてこれを奮起させてこそ、行政の進展も地域の振興発展も実現し、真の指導性の発揮ができるというものである。
 地方政治における政治家たる町村議会議員として、さらに勇気を出し、さらに奮起して職責を全うしたいものである。


                     


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