◆市民参加行政否決(040502)
中日新聞(040420)
住民投票やパブリックコメント(市民の政策提言)制度など、全国の自治体が住民の行政への直接参加を進める中、議会の役割が揺らぐケースが増えている。日進市でも、佐護彰市長が打ち出した市民参加型事業に多くの議員が反発。3月議会では当初予算案から同事業費を削った修正案が可決され、市長が再議を検討するなど紛糾した。新時代の自治のあり方は見つかるだろうか。 (鈴木 智行)
「ああ…」。3月24日の市議会最終日。修正案が可決されると、傍聴席の端々からため息が漏れた。議場を出た女性は、目に涙を浮かべた。
保守系議員らが修正案を出したのは前日。店舗跡を市民活動の拠点とし、利用団体で自主的に運営する「市民交流センター運営事業」、環境保全事業を市民団体に委託する「環境パートナーシップ事業」などの予算を削った。いずれも、計画づくりなどに数十人の市民が関与していた。
交流センターの運営計画づくりにかかわっていた市民団体の代表は「信じられない。民主主義がゆがんでいる」とやるせない表情。環境パートナーシップ事業を担おうとしていた特定非営利活動法人(NPO法人)の役員は「反対議員の支持者が全員、この事業に理解を示していないのだと思うしかない」と皮肉を込める。「市民全員がそのくらい、議員を選ぶ責任を感じてもらわないと」
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佐護市長と保守系議員との対立は過去の市長選の“遺恨”とも言われるが、根底には行政と議会、市民の関係に関する考え方のギャップがあるようだ。
市長派の議員は「市民が議会に頼らず物事を進めるのが不愉快という議員がいる。住民自治の時代について行けていない」と指摘。対して保守系議員は「市民参画と言っても、今は一部の声の大きい人が流れを作っている。昔から静かに自治を進めてきた人たちの意見が反映されていない」と批判する。
3月議会でもこうした批判を受けた佐護市長は「今まで以上に多くの声を聞く努力をしたい」とし、パブリックコメント制度を本年度中にも導入する構えだ。
一方で保守系議員の一部は、市が各地で意見交換会を開くなどして立案してきた市の各種基本計画についても、新たに議決事項に加えようと条例改正に動く。議会の「領分」をめぐるせめぎ合いは、まだ続きそうだ。
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「全国的にも同様の構図が増えている。議会がすべての住民を代表することが難しくなったからだ」。元中央大法学部教授の辻山幸宣・地方自治総合研究所理事は指摘する。
投票率の低下が示すように、政治的パイプに頼らず行政に向かい合おうとする市民が増えた。そうした市民と、支持者の意向のみを反映しようと努める議員との間に、接点がないのが問題という。
「議員自らが、両者の出会いの場をつくるべきだ」と辻山氏。「双方の声を擦り合わせた意見を議場に持ち込める議員でなければ、行政が『市民参加』の中で得た結論にやがて対抗できなくなるだろう」と警鐘を鳴らした。
常滑市は、行政への市民参画や民間非営利団体(NPO)との協働を進める「市民参画推進指針」を策定した。23日に開かれる市議会協議会で正式に承認される。
市民参画推進事業の目玉は、市民が公共財産の“里親”となり、世話をする「公共施設養子縁組制度(アダプトプログラム)」による環境美化運動。公園や歩道、海岸などの公共施設を「養子」に見たて、個人や団体などが「里親」となって、清掃や花飾りなどをボランティアで行う。行政は、ごみ袋を配布するなどの側面支援をする。同様の制度は半田市や大府市などが導入している。
市は「市民自身が手をかけ、汗を流すことで、郷土に愛着を持ってもらえるようになれば」として、早ければ本年度中にも始めたい考え。中部国際空港の開港も見据え「玄関都市としてふさわしい街づくりの起爆剤の一つにもしていきたい」と期待している。
このほか、市民生活に密接に関連する施策の計画策定や改訂にあたり、原案を公表、市民の意見を求める「市民意見提出制度(パブリックコメント)」を導入する。NPOなどが活動する施設として、市の遊休施設を活用してもらうほか、民間が使っていない施設を利用できるよう仲介もする。
指針策定にあたっては、昨年9月に設置した公募市民らでつくる検討委員会が提言。市は、市民からの意見を聞きながら指針案をまとめた。
(朝田 憲祐)
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